
安田恭介は、明治初年に石巻の名家に生まれたが、十代半ばにして両親と死別。
アメリカ本土からアラスカに渡り、ゴールドラッシュ時代に見事にシャンダラー金鉱山を発見。
白人による鯨の乱獲で食糧不足に苦しめられていた海岸エスキモーを率いて内陸のユーコン川沿いに移住し、そこにビーバー村を設立した。
その後ビーバー村の人々のために全生涯を捧た彼は、“ジャパニーズ・モーゼ” 又は “アラスカのサンタクロース”と称された。
故郷への思いの中、日本に帰することなく、1958年(昭和33年)、フランク安田は90歳の生涯を閉じた。

小説では、単なる“日本人の成功物語“ではなく、人生に対し、真摯に立ち向かう主人公の姿が見事に描かれている。
私はこのフランク安田という人のひたむきで真っ直ぐで誠実なところに惹かれた。
著者、新田次郎氏もフランク安田に相当ほれ込んだらしく、事跡をたどり子孫たちを取材し、アラスカや故郷の石巻の生家をも訪ねたらしい。
もうひとつ印象的なのが、フランク安田の妻ネビロ(エスキモー)の存在だ。
小説の中では彼女が金鉱を発見するきっかけを作り、その後の人生を大きく左右した。
そんな彼女の行動力とヴァイタリティもまたフランク安田にとってなくてはならない「支え」だったのではないかと思う。
この本は何年か後に、また再度読みたくなる本だろう。
読むのもいいが、ビーバー村に行ってみたくなったなぁ・・・。
(ユーコン川沿いだし)
